楽器演奏時のモニター用として扱いやすく、とても重宝しているヘッドホン SONY MDR-CD900ST。
購入から16年以上が経過し、長年の使用に耐えかねて外観がだいぶみすぼらしくなってきました。
まず目につくのが、黒い樹脂がボロボロに剥がれかかったイヤーパッド。
ところどころ破れて中のスポンジが見えています。
その内側には潰れて役目を果たせなくなったウレタンリング。
ただし、これらは気軽に交換できるので、大した問題ではありません。
過去にも何度か新調していますし。
問題が深刻なのはヘッドバンドのほう、経年劣化でもはや限界寸前。
そこで、ヘッドバンドのオーバーホールをすることにしました。
計画
すべてのパーツが補修用として販売されているMDR-CD900STの場合、オーバーホールの方法として真っ先に浮かぶのは新しいヘッドバンドとの交換です。
でもね、お高いんですよこれが。
ヘッドバンドだけでの販売はしていなくて、配線やスライドレール諸々を組み込んだ「ヘッドバンドASSY」として5000円ほどします。
まったく劣化していない金属やプラスチックのパーツはそのまま再利用できるので、新しい物は必要ありません。
それに、リッツ線で出来ている純正の配線材は屈曲に弱く、断線しやすいという不満点もあります。
だったらヘッドバンド部分だけを自分で作ってみようか、と思った次第です。
本革で作れば加水分解などの劣化を気にせず使い続けられるし、意外といけるんじゃないかと。
分解
まずは分解から。
ドライバーユニットにはんだ付けされている配線を外して、ハウジング部とヘッドバンド部に分けます。
プラスドライバー1本で分解可能な親切設計がありがたい。
業務用だけあって、メンテナンスしやすいように出来ています。
ひとつ注意が必要なポイントが、スライダー根元のプラスチックカバー部分。
ここはゆっくり慎重に開けないと、中に入っているスプリングに乗った小さな金属の玉がピョンと飛び出して紛失する危険があります。
すべてをバラバラにしてヘッドバンド部だけにできました。
ちなみに、この配線材は過去の断線修理で交換した物です。
純正の線材はヘッドホン購入後3年で断線。
それを交換してから13年も経っているのに、いまだに一度もトラブルがありません。
古河電工のBX-S 0.08sq、なかなか優秀な線材だと思います。

断線したMDR-CD900STを修理する
MDR-CD900STのRch側から音が出なくなってしまいました。考えられる原因はドライバーユニットの故障、ケーブルの断線。可能性としては後者のほうが高いと思います。実際にバラしてチェックし、断線が原因であることを確認...
この記事を読み返したらそこでも「ヘッドバンドASSYが高い」と文句たらたら。
セコい性格は変わっていないなあ、と我ながら情けなくなりました。
当時は3360円だったみたい、今は4980円…
あらら、めっちゃ値上げしていますね。
ヘッドバンドの内部構造
ヘッドバンドは両サイドの糸をほどいてきれいにバラすつもりでしたが、糸ががっちり食い込んでリッパーではうまく切れませんでした。
仕方なく外布をカッターで切ってバラしました。
実際にバラして中を見たところ、構造が想像していたものとは違っていました。
こちらが断面を簡略化した図です。
まず驚いたのが外布の薄さ。
一般的な薄手の合皮くらいの厚さ・質感を想像していましたが、まったく異なる物でした。
くたっと柔らかい極薄のニット地に樹脂を吹き付けたような生地で若干の伸縮性があり、純正イヤーパッドの生地とかなり近い雰囲気があります。
もしかしたら同じ素材かもしれません。
上スポンジはしっかり目が詰まった固めの素材。
サイズが最も大きく、これがヘッドバンドの外形をかたち作っているようです。
両サイドの縫い目にしっかり縫い込まれています。
上プラ芯は上スポンジと全面で接着されています。
上プラ芯のほうが若干小さく、縫い目のラインぎりぎり内側に収まるサイズです。
下プラ芯はそれよりもさらに小さいのですが、中央部だけが両サイドに飛び出ていて、そこを縫い込んで固定するようになっていました。
上スポンジ・上プラ芯・下プラ芯を上外布でぐるりと包み込み、下中央で粗く縫い留めてありました。
その下にある下スポンジはごく一般的なウレタンスポンジといった感じでフカフカしています。
おそらく頭への当たりを柔らかくするための物だと思います。
接着も縫い込みもなく、これだけはどこにも固定されていませんでした。
そして一番下が下外布です。
これら全てをひとつに重ね合わせ、かがり縫いのような感じで巻きつけるように縫われていました。
配線やスライドレールなどは上下プラ芯の間を通すようになっています。
作成
バラバラにした物を参考にして新しいヘッドバンド製作作業へに移ります。
使える素材はそのまま再利用。
型紙
バラす前の現物をそのままあてがって線を引き、それを整えて型紙にしました。
シビアに作るのであれば、皺ができないように下布側の型紙を短く作る必要がありますが、今回は上下共通の型紙で作ります。
オリジナルの生地みたいに伸縮性があればそこまで気にしなくても大丈夫なんですけどね。
素材
外布にするのは厚さ0.5mmの豚革。
家庭用ミシンで縫うことを考えると厚い革は厳しいかなと。
ネット通販をざっと見て回った限りでは0.5mmが最も薄く、牛・豚・羊の中で薄く漉いても丈夫なのが豚とのことだったのでこの革にしました。
縫製
型紙に合わせて革を裁断し、中表に合わせて縫い合わせる。
裏返したときに中で邪魔にならないように、縫い代を半分ほどにカット。
縫い合わせた革を表に返す。
これがなかなか思うようにいかなくて、ひと苦労。
薄めとはいってもやはり革。
布のようにすんなり裏返ってくれません。
やっとの思いで表に返した頃にはもうクタクタ。
返し口に使ったほうの端部分(画像左側)が若干伸びてしまっています。
そこに上スポンジ・上プラ芯・下プラ芯を入れていきます。
中央部に対して入り口が小さいので、かなり強引に押し込むことになりました。
それでもなかなか入っていかず、プラ芯の左右をわずかに削ることでなんとか納めました。
当初の予定ではここで両サイドにステッチを入れるつもりでしたが、それは断念しました。
革4枚+プラ芯に針を通すのはミシンにかかる負担が大きく、下手したら故障の可能性もあること。
仮に縫えたとしても、きれいに縫えなかった場合に針穴がそのまま残ってすべてが台無しになること。
いったんほどいて縫い直せばいいというわけにはいかないのが、布と違って難しいところ。
ここでそのリスクはとれませんでした。
完成
完成したヘッドバンドにスライドレールや配線材を通して組み立て。
ドライバーユニットのはんだ付けを済ませ、左右のハウジングに取り付けたら完成です。
SHURE HPAEC240
ついでにイヤーパッドを新調、今回は初めて純正以外の物にしてみました。
SHUREのHPAEC240 SRH240用イヤーパッド。
薄くビニール感のある純正に対し、厚めで合皮感のある素材。
純正は劣化したときに樹脂がポロポロ剥がれ落ちてきますが、こちら硬化してひび割れそうな感じ。
K240mk II の合皮パッドに似た質感です。
頬にペタッと張り付く感触が純正よりも少なくて、個人的にこちらのほうが好みです。
しかも純正のほぼ半額。
かなり気に入りました。
次の交換もこのイヤーパッドになりそうです。
感想
本革のヘッドバンドになり、見た目の印象がだいぶ変わりました。
ただ、作業前に思い描いていたほど格好いい仕上がりにはなりませんでした。
ひとつはステッチ。
やはりステッチの有無で見た目の締まり具合がかなり変わってきますし、できれば入れたいところです。
余裕があればチャレンジしてみたい。
中の芯を帽子作りで使ったベルポーレンにすれば縫えそうな気もします。

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あとは色かな、それとも質感か。
本体やイヤーパッドの黒とヘッドバンドのブラウンの組み合わせがどうにもチグハグに感じてしまいます。
ヘッドバンドだけ妙に浮いているというか、うまく説明できないけどとにかく合っていません。
とはいえ、それら一部の不満点を除けば概ね満足しています。
なにせ本革、加水分解などの劣化を心配しなくていいのは最高のメリットです。
それではまた。















