(見出しの日付は元記事の投稿日)
2021年8月1日
去年の秋頃から半年ほどかけて、初めてのチューブアンプ製作をしていました。
期間の大半は情報を収集したり真空管を使った回路について学ぶことに費やし、実際の製作作業にかかったのは1ヶ月ほど。
試行錯誤を繰り返し、紆余曲折を経てなんとか完成しました。
それから3ヶ月ほど自宅での練習に使っていますが、張りのある音で結構気に入っています。
といっても、まだいくつかの問題点を抱えていて改善の余地があるのですが。
それについてはおいおい触れていきます。
Laney Cub Headが壊れた
主に自宅練習用として愛用していたチューブアンプヘッドのLaney Cub Head。
低価格ながら素直なチューブサウンドを楽しめるナイスな1台。
そんなCub Headをいつものように鳴らしていたら突然電源が落ち、中を確認してみるとヒューズが飛んでいました。
その時点では故障を疑わず、ヒューズを交換。
気を取り直して電源を入れるも再びヒューズ飛び、そこで初めて故障だという考えに至りました。
Cub HeadやCub12Rのトラブル事例、一般的なチューブアンプの故障事例などについて調べ、回路図とにらめっこをしながら故障箇所探し。
真空管、B電源の平滑コンデンサ、整流ダイオード、ポリスイッチ、など怪しいところを調べるも全て正常。
基板周りを一通り調べ終え、最後にたどり着いた電源トランスが犯人でした。
2次側のコイルのうち、B電源に使うほうがレイヤー(レア)ショート。
トランスが壊れるというイメージがあまり無かったので、少し意外でした。
修理するか否か
まずは購入した店に問い合わせ。
そこはLANEYの輸入代理店でもあるので、もしかしたらトランスの取り寄せができるんじゃないかと淡い期待を寄せもしましたが、やはり修理対応のみという返答。
トランスそのもの値段に加えて往復送料や工賃などを考えると、新しいアンプに買い替えるのとさほど変わらない額になるのは容易に想像がつくため、これはパス。
ならば通販、ということで検索してみると純正の電源トランスが1件ヒット。
しかし送料別で120ユーロ。
お世辞にも質がいいとは言えないトランスにこの額は高すぎるのでこれも却下。
この値段ならもっと高品質な物を買えます。
だったらそれに替えればいいんじゃないかとも思いますが、質の良いトランスは同じ容量であってもサイズが大きくなるため、Cub Headのシャーシに載せることができません。
ここで手詰まり。
どうしようかなと考えていたところで脳内のモードが切り替わる。
もうこれ修理するより新しいの作ったほうがいいんじゃない?
以前からチューブアンプ作ってみたいと思っていたし、面白そうだし。
構想を練る
壊れたチューブアンプを修理するのではなく、新たに作ることに決めたので、どんな物にするか大まかに考えていきます。
・Cub Headのキャビネットをそのまま使う
・シャーシやパーツも流用できる物は再利用する
・出力は低め(~15Wくらい)
・プリアンプ回路はJCM800風にする
回路に関しては、チューブアンプ製作に必要な知識をまったく持っていなかったので、主にネットで調べて勉強しました。
中でも特に参考になったのが、以下の2つのサイトです。
超初心者のための真空管アンプの工作、原理、設計まで
この企画は、本来は、真空管でオーディオアンプを作れるようになる、というものだったのである。実は、2006年にCQ出版から「iPodで楽しむ真空管& D級アンプ」という本を出版したのだが、その中で真空管アンプの製作から設計...
このサイトに出会えなかったらチューブアンプ自作を実行に移すことはなかったでしょう。
僕にとってはそれくらい重要。
初心者向けにここまで丁寧にチューブアンプ製作について解説しているサイトは他に無いと思う。
しかも日本語(これ重要)。
同サイトをベースにした書籍も出版されています。
Rob Robinette's Tube Amplifier Website
Welcome to Rob Robinette's Tube Amplifier Website. I'm robrob on many amp forums and I freakin' love tube guitar amps. I have over 750 pages worth of tube amplifier information below so browse around and enjoy...
こちらのサイトには全てのパーツにそれぞれの役割を併記した回路図が掲載されているので「このコンデンサは何のためにある?」「この抵抗って必要なの?」などといった疑問を解決するのにとても助けになりました。
解説文はGoogle翻訳と原文をにらめっこしながらでなんとか理解できる程度ですが、それでも十分。
ここの回路図をいくつも見比べているだけで勉強になると思います。
他には、ギターアンプだけでなくオーディオ向けの物も含めたチューブアンプ製作系のサイト、実際の製作過程を記録した個人のブログ、海外のDIY系フォーラムなど、いろいろな記事が参考になりました。
最終的に、JCM800のプリアンプにEL84プッシュプルのパワーアンプという組み合わせで作ることに決めました。
そもそも、Cub Headの回路がこのような構成になっていて、このこともチューブアンプの回路について勉強していくなかで気付きました。
「あれ、このCub HeadのプリアンプってJCM800とそっくりじゃん」って。
新しいことを覚えていくとこういった気付きがあるのが面白いですね。
2021年8月9日
どんなアンプにしたいか大体決まったので、回路図とレイアウトを書いていきます。
まずは手書きで大まかに配置を決め、それからDIY Layout Creatorを使って清書。
いつもエフェクター製作でレイアウトを考えるときにしているのと同じ手順です。
回路図
まずは回路図から。
基本構成はJCM800のプリアンプにEL84プッシュプルのパワーアンプ。
プリアンプ部分の定数はほぼJCM800そのままで、フェイズインバーターからパワーアンプまではCub HeadやBlues Juniorの定数を参考に決めていきました。
回路図右上のオレンジの四角はCub Headのリバーブ&センドリターン基板。
小さな基板とセンドリターン用のジャックが一体となって独立していて、この基板をなんとか再利用できないものかと考えてここに組み込みました。
ただ、リバーブとセンドリターンがあるのは便利とはいえ、オペアンプを通るのが悩みどころ。
せっかくフルチューブのアンプを作るんだからチューブのみで完結したいという思いもあります。
そこで、この基板を通るかスルーするかをスイッチで切り替えられるようにしました。
回路図左下の電源回路のうち、1番下にあるのは両波4倍圧整流回路です。
上述した基板が正負15Vの電源を必要とすることと、使用する予定のPMC-100Mというトランスのヒーター巻線が1つ余っていたことからこの方法を採用しました。
バイアス用のC電源もここから取っています。
ゲインに2連ポットを使い、片方を2段目のカソードパイパスコンデンサの所に入れるのはLaneyのアンプでよく使われている回路で、Cub Headでも同様です。
ポットを再利用するつもりなので、ついでにこの回路も再現しました。
2段目にカソードパイパスコンデンサを入れないJCM800風回路とスイッチで切り替えられるようにしています。
基板レイアウト
レイアウトを考えるのはパズルみたいで楽しい。
メインの基板はハトメを使ったポイント to ポイントで、それ以外はプリント基板またはユニバーサル基板です。
全てをポイント to ポイントで組みたかったのですが、シャーシのスペースや再利用するパーツの都合もあって、ここは妥協することにしました。
シャーシレイアウト
Cub Headの内部
多くの表面実装部品で構成された基板や小さめのトランスなどによって、かなりの省スペース化がなされています。
低価格帯のチューブアンプの内部はどれも似たようなものでしょう。
音の質を極力キープしながらコストダウンさせるノウハウがここに詰まっているのだと思います。
Cub Headのシャーシ
奥行きが狭く、このままでは作る予定のアンプを載せることはできません。
しかし、幸いなことにこのシャーシは2つに分かれるようになっています。
この手前側のパーツ(基板やトランスなどを載せる部分)を新たに作り、もう一方のパーツと組み合わせることで希望するシャーシを作ることができそうです。
これならシャーシ全体を1から作るよりはずっと作業が楽になります。
シャーシレイアウトはOpenOfficeのDrawを使って書きました。
Cub Headのキャビネットとシャーシに合うように各寸法を決めていきます。
いったん決まったところでプリントアウトし、真空管やトランスの間隔などパーツ同士の位置関係を現物で確認。
それを基に微調整の繰り返し。
アルミ板を加工した後になって設計ミスに気付くのでは遅いので、ここは面倒でもしつこいくらいにチェックをします。
2021年8月14日
回路図やレイアウト-いわば設計の部分が終わったので、いよいよ加工・工作といった実際の作業に取り掛かっていきます。
シャーシ曲げ加工
シャーシ作成に使うのは1.5mm厚のアルミ板。
加工性を優先して1mm厚にするか、強度を優先して1.5mm厚にするかでさんざん悩んだ末にこちらを選択。
これが吉と出るか凶と出るか。
最初の曲げ加工は5cmくらいの直線。
万力に固定して曲げることで割ときれいな直角になりました。
これならなんとかなりそうだと気を良くして、次は40cmほどある長い直線の曲げ加工。
しかしこれが全然曲がりません。びっくりするくらい曲がりません。
作業台・アングル・クランプを総動員して全体重をかけてみても、板バネのようにビヨンビヨンと弾かれて曲がってくれません。
改めて調べてみると、このくらいの長さの曲げ加工をするには大きめのベンダーが必要になるみたいです。
アルミ板は加工しやすいからといって1.5mmの厚さをナメていました。
それでも自力でなんとかしようと必死に作業を続け、やっとの思いで90度まで曲げた結果がこちら。
ご覧の通り、直角というには程遠い緩やかなカーブ。
これではシャーシとして使えません。
仕方がないので、ここからは金づちで叩いて曲げることにしました。
アルミ板が傷だらけになるため、できれば避けたかった。
しかし背に腹はかえられません。
万力とアングルでアルミ板を固定し、ひたすら叩き続けます。
傷が付かないように当て木の上から叩いてみましたが、それだと弾かれてしまいました。
結局はアルミ板を直接叩いて加工することに。
叩くごとに角が出てシャーシらしい形に近づく一方、表面には金づちの痕がうろこ状にくっきりと。
そんな苦労の甲斐あって、なんとか目標とする形にすることができました。
凹凸だらけ傷だらけになってしまったのは残念ですが、そもそもシャーシはキャビネットの中に収まる物。
外から見えるわけではないですし、これはこれで良しとします。
最後にリベットで固定して曲げ加工終了。
リベッターは今回初めて使いました。
これがなかなかのお役立ちグッズで、もっといろいろなところで使ってみたくなりました。
今後、金属板を加工する機会が増えるかもしれません。
千円しないで買えるのが意外でした。
シャーシ穴開け
やっとの思いで1枚のアルミ板を箱状に仕上げ、次は穴開け加工。
曲げ加工の苦労とは一転、作業がさくさくと進んでいきます。
真空管ソケット用の大きな穴には20mmのホールソーを使いました。
トランス用の角穴にはハンドニブラを使用。
ハンドニブラも今回が初体験。
パチンパチンと切り進み、さほど苦労することなく開けられました。
ただし、滑り止めつきの軍手は必須。
これがないとすぐに手が痛くなります。
Cub Headのシャーシにも必要な穴を追加で開けていきます。
こちらは厚さ1.2mmほどのスチール。
かなり手強いぞと気合を入れて挑みましたが、意外とすんなり終わりました。
苦労度はアルミ板の1.5倍くらいのイメージ。
ハンドリベッターのハンドナッター化
Cub Headの2つのシャーシパーツはネジで固定するようになっていて、雌ネジ側にはブラインドナットが使われています。
新たに作ったシャーシにもこれを取り付ける必要があります。
ただ、ここでひとつ問題が。
ブラインドナットをカシメるのに必要なハンドナッターという工具がちょいとお高いのです。
よく使うのであれば買ってもいいけど、使用頻度が少ないとなると買うのをためらう。
そんな絶妙なお値段。
そこで目に入ったのがリベッター。
カシメの原理自体は似たようなものですし、見た目もそっくり。
これで代用できるんじゃないかと検索してみたら、同じようなことを考えている人の記事をいくつか発見。
それらを参考にリベッターをハンドナッター化してみました。
M8とM12のボルトの中心に穴を開け、M12のほうはネジ部分だけ10mmほど切り出す。
今回はM4とM5のブラインドナットをカシメるので、穴径は4mmと5mmの2セットを作りました。
リベッターの部品(ノズル・ジョー・プッシャー・コイルバネ・押えネジ)を取り外します。
穴を開けたM8のボルトをノズル部分にセット。
M12のボルトから切り出した穴開きネジを後部のネジ穴にセットし、M5の寸切りボルトを穴に通す。
寸切りボルトにはワッシャーとナット2つをセットしておく。
ノズル側から出てきた寸切りボルトにM5のブラインドナットをセット。
押えネジ側のナットを締めて寸切りボルトが動かないようにする。
この状態でハンドルをぐっと握り込めばブラインドナットの根本が潰れてカシメられます。
この代用ハンドナッターでカシメたブラインドナットはこんな感じ。
しっかりカシメられていて、かなりトルクをかけてネジを締め込んでも動くことはありませんでした。
塗装
最後に塗装をしてシャーシが完成。
暗いキャビネット内でアルミの銀色が浮き上がって悪目立ちしたら嫌なので、フロントグリルから見える部分だけを黒く塗装しました。
水研ぎペーパーを軽くかけてからメタルプライマーを吹き、ラッカースプレーで塗装。
それなりにしっかり塗装したつもりでしたが、この後のパーツ組み込み作業中に結構ハゲてしまいました。
やっぱりアルミへの塗装は難しい。
思わぬ苦労にも見舞われつつ、これでシャーシが完成。
2021年8月16日
次は基板周りの作業に入っていきます。
パーツの再利用
ポットやジャックなどいくつかのパーツはCub Headの物を再利用します。
他にも、真空管・スイッチ・パイロットランプ・ノブなどを再利用。
画像を見ても分かるとおり、取り外したポットやジャックの端子は基板に直付けするタイプになっています。
ここに直接配線をしてポイントtoポイントというのはちょっと厳しいので、ここではプリント基板とユニバーサル基板を使うことにします。
プリント基板作成
というわけで、久しぶりのプリント基板作り。
DIY Layout Creatorで書いたパターンをレーザープリンタで印刷。
用紙は写真用の光沢紙を使っています。
過去にシールの台紙やクッキングシートなどいろいろ試した結果、これが1番きれいにトナーを転写できました。
生基板は希望のサイズにカットしてからスチールウールで軽く磨いておきます。
光沢紙に印刷されたトナーをアイロンで転写します。
マスキングテープで基板と光沢紙を固定し、アイロンでむらなく加熱。
アイロンの温度設定は木綿より少し低めにしています。
次に軽く絞った濡れタオルを被せ、その上からアイロンをかけて紙を蒸らします。
これで紙が剥がれやすくなるみたいです。
最後に水に浸して冷めるのと紙がふやけるのを待ち、冷めたらそっと紙を剥がして転写完了。
トナー転写後。
トナーに欠けがあるところはレジストペンや油性ペンでレタッチしておきます。
「マッキーの青が良い」と言われていて僕もそれを使っていますが、真偽の程は不明。
エッチング。
エッチング液はオキシドールにクエン酸と塩を溶かした物。
チャック袋にエッチング液と基板を入れ、口を閉じたらお湯の中へ。
湯温を40℃くらいにキープして銅が溶けやすくなるようにします。
エッチング終了後の基板。
ちょっと長く浸けすぎました。マッキーで塗ったところが剥がれてしまっています。
穴を開けてトナーを落としたらプリント基板の完成です。
クエン酸エッチングのおかげで、第二塩化鉄を使っていた頃よりも気軽にプリント基板を作れるようになりました。
クエン酸エッチングについてはこちらの記事もどうぞ。廃液処理についても書いてあります。

クエン酸エッチングで基板を作る
難しいことではないけれど、いざやろうするとハードルが高いエッチング。 エッチング液(塩化第二鉄液)の用意とその取扱い、そして廃液の処理。 本を参考にして初めてのエフェクターを作った頃は、本の指示通りにエッチングでプ...
ハトメ基板(アイレットボード)作成
メインの基板はハトメを使ったポイントtoポイント配線です。
見た目のかっこ良さで勝るタレットボードへの憧れもあったのですが、コストが3倍くらいになるので諦めました。
ハトメ基板作成に使うのはこちら。
3.0x5.0mmの電気ハトメ、3mm厚のベークライト板、菊割り棒、頭が平らなボルト。
レイアウト図から基板の穴だけを残して印刷。
それをベークライト板に貼り付けて穴開け。
いくつかあるサイズ違いの穴を間違えないように注意しつつ作業を進めます。
配線材を通す穴は面取りしておきます。
下穴にハトメを嵌め、菊割り棒でプレス。最後にボルトの頭で仕上げ。
左からプレス前、菊割り棒でプレス後、ボルト頭でプレス後。
プレスにはボール盤を使いました。
金づちで叩くよりも安定してきれいに開きます。
菊割り棒を押し込んでパッと花開くのが気持ちいい。
菊割り棒だけだと縁が浮いたままになるため、追加のプレスで押さえる必要があります。
何か頭が平らな物はないかと探して、今回はたまたま目に入ったボルトを使用しました。
すべてのハトメをカシメたらハトメ基板完成です。
次回はこれらの基板にパーツを実装していきます。
それではまた。




































