TS系オーバードライブを作る(Landgraff DOD編)

Nori (groocyweed)
By -

以前から作りたいと思っていたTS系のオーバードライブを作りました。

一時期は自作エフェクターの定番みたいになっていたLandgraff Dynamic Over Drive(以下DOD)のコピーです。

(toc) #title=(目次)

ケース加工

使用するケースはハモンドの1550Bです。

MXRサイズの定番である1590Bとほぼ同サイズ。
板厚が若干薄くて(1590B=t2.0 / 1550B=t1.5)値段が安め。

サクサクと穴を開けていき、ケース加工完了。

トグルスイッチの位置

モード切り替えスイッチの位置をオリジナルのDODとは変えて、トーンノブの横にしています。

オリジナルの位置(ケース中央、トーンノブの下)だと、フットスイッチを踏むときに一緒に蹴飛ばしてしまいそうで怖いんです。

そこで「どっち側に寄せようか、どっちでもいいのかな?」という素朴な疑問が浮上。

クリッパーへの配線がインプットの近くにあると発振したといった内容の経験談をいくつかの製作記事で見かけたので、アウトプット側に寄せることにしました。

回路とレイアウト

DODの回路についてはさんざん語られているかと思います。
今さらここで言うまでもなくTSです、紛れもないTSです。

定数の変わっている箇所がいくつかあるくらいで、TS系とするのもはばかられるほどの「まんまTS」です。

そのことで批判をする人もいれば、あの定数やパーツ選定にたどり着いたことが凄いと評価する人もいて、あれやこれやとネタにされがちなエフェクターでもあります。

回路図

"Landgraff DOD schematic"で検索すると見つかるいくつかの回路図のうち、Clay Jonesが書いたとされるものを参考にしました。

方眼紙に鉛筆手書きのあれです。

ジョークなのか皮肉なのか、この回路図のタイトルにはGrand Laff Dynamic Overhypeと記されています。
そこにClay JonesとJohn Landgraffの関係が垣間見えるような気がして、いろいろな想像が掻き立てられます。

そのあたりについてClay Jonesが語ったとされるお話が、こちらのサイトに詳しく書かれていました。

コラム:クレイ・ジョーンズが語るジョン・ランドグラフとボブ・バートの真実、そして日本のブティックペダル市場の夜明け 前編

コラム:クレイ・ジョーンズが語るジョン・ランドグラフとボブ・バートの真実、そして日本のブティックペダル市場の夜明け 前編

生産台数50台という幻のドライブペダルClay Jones OD。 その作者クレイ・ジョーンズが、友人でもあったジョン・ランドグラフとボブ・バート、そして日本のブティックエフェクター市場の黎明期について語りました。 その抄訳を...

興味深い内容で考えさせられるところもあり、読み物として面白かったです。

レイアウト

ネット上で見つかるレイアウトは、横幅をケースいっぱいに広くとって縦を短めにしたものがほとんどでした。
中央にあるモード切り替えスイッチと基板が干渉しないように、という理由があってのことなのかもしれません。

しかし、上述したように今回はスイッチの位置をトーンノブの横にしているため、拾い物のレイアウトでは干渉してしまう可能性があります。

そこで、基板の幅を少し狭めて縦を長くする方向でレイアウトを考えました。

縦14穴x横18穴で結構コンパクトにまとめられました。
基板サイズの都合でクリッパー部分を別基板にしています。

クリッパー

歪み音色の方向性に影響を与えるクリッパー部分は、自分好みの音を探して試行錯誤を楽しめる部分でもあります。

オリジナルのDODでは2種類のクリッパーとクリッパー無しの、合わせて3つのモードを切り替えられるようになっています。

どうせ別基板にするのなら、クリッパーの選択肢をもっと増やしてみるのも面白い。

おあつらえ向きなon-on-onのスライドスイッチ(SS-14MDH2)を秋月で見つけたというのもあり、6種類のクリッパーを切り替える基板を作ることにしました。

トグルスイッチで2つのスライドスイッチを切り替え。
スライドスイッチの先にはそれぞれ3つずつのクリッパー。
これらにクリッパー無しを加えた計7パターンの音を試せます。

製作作業

下準備が整ったので製作作業に取り掛かります。

メイン基板

レイアウト図を見ながらユニバーサル基板にパーツをハンダ付け。

左上のフィルムコンデンサだけがボックスタイプじゃないのは、単なる買い物ミス。

0.022uFのはずが0.0022uFを買っていました。
電子工作あるあるですね。

代わりにジャンクのTASCAM 488から取った茶色いフィルムコンデンサ(ECQBっぽい)を使いました。

ジャンクのTASCAM488

ジャンクのTASCAM488

TASCAM488の2台目と3台目を購入したお話。 まずは2台目。 実をいうと、これはカセットMTRを探し始めた初日に見つけていた物。 再生せずのジャンクで500円。 しかし外観がかなり汚かったため、迷った末に購入は見送り...

出力前のカップリングは安いディップタンタル。

「これぞDOD!」な青いヤツ(スプラグ150D)を試してみたいという思いもありましたが、10uFだけがやたら高いのを見て悩んで結局カートから削除。

数百円の違いなのにね、我ながら情けない。


高さのあるパーツは倒して配置。

いちおう、こんな風に倒すパーツがあることも想定してレイアウトを考えています。


基板の裏側はこんな感じです。

ハンダめっきされた基板は便利でもあり、ところどころ邪魔に感じる場面もありで一長一短でした。

クリッパー基板

こちらはクリッパー基板。

  • スライドスイッチA
    • 2N7000+BAT41(非対称)
    • 1N4002(対称)
    • 赤色3mmLED(対称)
  • スライドスイッチB
    • 1N914(非対称)
    • 1N914(対称)
    • 1N60(対称)

各スライドスイッチで3つの中から1つずつ選択し、それをトグルスイッチで切り替えます。

この後、1N60は別の物に換えることになりました(後述)

ケース内配線

基板が完成したらケース内の配線。

このあたりはどんなエフェクターでも大体同じ作業。

配線の7割くらいはケースの外でハンダ付けするほうが作業効率がいい。
その後、ケースにパーツを固定してから残りをハンダ付け。

ケース内の配線を仕上げたら、最後は基板への配線をハンダ付け。

ケース内がだんだん混み合ってきて、ちょっと面倒な作業。

絶縁

基板-ケース間の絶縁には、クリアファイルを折り曲げて作った物を使っています。

基板とスイッチの干渉もなく、無事きれいに収まりました。

これで完成です。

音出しチェックは一発でクリア。
フルテンにしても発振することなくバッチリ鳴ってくれました。

感想

やっぱり歪み物は試奏が楽しい。

「ロックは時代遅れ、歪んだギターは終わった」なんて言われても、弾いていて気持ちいいのは歪んだ音なんです。

クリッパーによる音の違い

いろいろなクリッパーを切り替えられる仕様にしたら、やっぱり気になるのはそれぞれの音の違い。

以下は個人的な感想です。

クリッパー無し

DODでいうところのダンブルモード。

これだけやたらと音がデカい。
歪みが粗くブーミーで、ゲインをフルにすると低音弦の音が潰れます。

最初に鳴らしたときは「ダメだこれ、使い道がわからん」という印象でした。
最近になって、単音メインにして暴れる感じを活かす方向で使ったら面白いんじゃないかと思い始めています。

2N7000+BAT41(非対称)

Zendriveに採用されている組み合わせ。

がっつり歪ませても音にパキッとした芯がある感じ。
別々に作った歪みとクリーンを後から合わせた音に似ているような気もします。

個人的に、7つの中では最も扱いやすく好きな音。

1N4002(対称)

BD-2のKeeley MOD用に買った1N4002が余っていたので採用。

可もなく不可もなし。
歪み成分は少なめ。
艶っぽさもあってLEDや1N914よりもいい音に聴こえるのに、弾いていてあまり楽しくない。

赤色3mmLED(対称)

DODでいうところのマーシャルモード。

粒が気持ち粗めでカリッとした感じの歪み。
ただ、マーシャルのアンプにもガバナーにも似ていないと思う。

個人的に好きな音。

1N914(非対称)

DODでいうところのTSモード。

他よりも若干音量が小さく、歪みの量は多め。
粒が細かく湿っぽい感じの歪み。

個人的に、TS系の音と言われたときに頭に浮かぶ音がまさにこれ。

1N914(対称)

DODのTSモードは個体によってこちらの場合もあるそうです。

1N914の非対称と同じ音に聴こえます。
同じ素子を使用した場合に、対称と非対称でどのような音の違いが表れるか楽しみにしていたのですが、予想外の結果に。

使うアンプや音量など、聴き比べる環境にもよるので一概には言えませんが、少なくとも僕の耳では違いは分かりませんでした。

1N60(対称)

ゲルマニウムならどうなるか、ということで製作前からかなり期待をしていた1N60。
しかし、まともな音が出ずに無念の脱落。

ハンダ付けの熱で壊してしまったのかと思い(ゲルマニウムダイオードは熱に弱い)、新しい物と入れ換えて再挑戦しましたが、まったく同じ結果になりました。

とても小さくか弱い音がチーチーと鳴るのみ。

1S1585+謎ダイオード(対称)

脱落してしまった1N60に換えて、適当なダイオードを選んで取り付け。

オレンジとブルーのダイオードが1S1585。
黒いのは秋月のお楽しみ袋に入っていた型番不明のダイオード(Vfは実測で0.56前後)です。

音の傾向は1N914と同じ。
歪みがより深く、ウエットに感じられます。

ギターを始めた頃に使っていた安物のトランジスタアンプをフルで歪ませたときの音を思い出しました。
人によっては安っぽい歪みと思うかもしれません。

いわゆる「いい音」とはちょっと違うけど、懐かしい感じがして好きな音。

エピローグ

実は、このエフェクターを作ったのは数年前。
ちょっとした成り行きからブログ記事にしそこねていました。

  • クリッパー比較用に音源を載せたいと考える
  • 歪み物の音源ならライン録りよりマイク録りのほうがいいんじゃないかと考える
  • キャビネットが欲しくなる
  • キャビネットの自作に興味が湧く
  • キャビネット作りに夢中になる
  • エフェクターの記事のことを忘れる

思い出した頃には「今さらこのことを書くのもな~」といった感じで気が乗らず、途中まで書いた記事を完全放置することになりました。

1x12ギターアンプ用キャビネットの自作 その1

1x12ギターアンプ用キャビネットの自作 その1

実は、半月ほど前から12インチ1発のギターアンプ用キャビネットを作っていました。 完成が近づき、作業にも余裕が出てきたので、少しずつ記事にまとめていこうかと思います。 いろいろな市販のキャビネットを参考に、いくつかの...

それなのになぜ今になって記事にしたかというと、この話に続きができたから。
具体的には、基板を作り直してのリメイクです。

これは最近撮ったもの。
完成時に表からの写真を撮るのを忘れていました。

金属のくすみ加減やノブの汚れから数年の経過が見て取れるかと思います。

これが新たに生まれ変わります。

というわけで、次の記事はこのエフェクターのその後のお話です。

TS系オーバードライブを作る(ZendGRAFF編)

TS系オーバードライブを作る(ZendGRAFF編)

前回の記事では、数年前に作ったLandgraff DODのコピー(以下旧版)についてあれやこれやと語っています。 結構気に入ってずっと使っていて、そのなかで気になる点がちらほらと。 それらを改善すべく新たに作り直すことにしま...

それではまた。